出刃と柳刃
魚に限らず、切れ味の良い包丁を使うと味が良くなります。
理由は、切れ味の良い包丁で食材を切ると断面がきれいに切れるからです。
切れ味が悪いものを使うと断面が押し潰され、旨みが逃げてしまいます。
特に刺身の場合は、旨みが逃げると共に、水っぽくグショグショの身になってしまいます。
野菜などでも同じように、潰れた断面から旨みが抜けてしまい料理の味に差が出てしまうのです。
ですので美味しいものを作りたいなら、包丁は切れ味の良いものを使うに越したことはありません。
材質
材質も、ステンレス鋼・クロムモリブデン鋼・白鋼・青鋼など様々有り、焼入れや仕上げ方により金額も変わります。
ステンレス鋼はなじみの深い材質ではありますが、手入れはしやすいですが切れ味はかなり落ちます。
ステンレス以外の鍛造物なら、安価な物でも手入れさえしっかりしていれば切れ味は良いです。
オススメなのは青二鋼を使った物。
金額で言うと鏡面仕上げ以外なら2万円前後で購入でき、切れ味が持続する上に手入れも比較適しやすいです(研ぎやすい)。
白一鋼は切れ味は申し分ありませんが、刃が硬い為研ぎ直しなどを行う際なかなか研げなかったりします。
何れにせよ、家庭で使用するものであれば予算の範囲内で気に入ったものを購入すると良いでしょう。
ステンレス鋼以外のものを購入すれば、切れ味は満足行くものが得られると思います。
包丁の種類
ここは魚料理のサイトですので、魚を捌くのに適した包丁を取り上げます。
魚を料理するには大きく二種類に分けられ、ご存知の通り三枚おろしやブツ切りに使用する出刃包丁と、刺身を引くのに使用する柳刃包丁があります。
出刃と柳刃は形の違いでわかるように、それぞれ用途も違います。
出刃は刃が厚く丈夫な為、三枚におろす・骨を断ち切る・りウロコをとるなどの作業に適しています。
一方の柳刃は刃が薄く長いのが特徴になり、切れ味もカミソリのように良く切れます。
これはサクに切った身を刺身にするのに適しています。
よく、刺身を引くといわれるように、柳刃を使う時は、元から先端までの刃を一杯に使い、引く様に切ることで魚の身の細胞を潰すことなくきれいに切れます。
前記した通り、この切れ味こそが、刺身の味を左右します。
出刃包丁
捌く魚の大きさなどにより、使う包丁の大きさも変わってきます。
とは言え、料理人で無い限り数万円の包丁を何本も購入したくないと言う方もいることでしょう。
家庭で捌く魚の大きさは、大きくてもせいぜい100cm以内だと思います。
一番多いのは50cm未満ではないでしょうか?
魚の大きさに合わせた包丁を数本用意できればベストですが、実際に何本も持っていても、私の経験上、出刃は2本有れば十分だと思います。
中でも一番用途が多いのは130mmの刃渡りの物です。
このサイズは大き過ぎず小さ過ぎずで、私の大きな手でも使い回しが非常に良いです。
アジのような小型魚から、慣れれば70cm前後のヒラマサまで捌くことが可能です。
オススメなのは、堺孝行作、青二鋼鏡面 相出刃 135mm
この出刃は青二鋼を使用しており、表面が鏡面仕上げになっていて見た目も非常にきれいです。
切れ味に関しては文句なし。ちゃんと手入れをすれば一生使える代物です。
こちらは同じく堺孝行作の青二鋼 相出刃 165mm
50cm以上の魚を捌くにはこのぐらいの長さがあるほうが使いやすいです。
そして真鯛やクロダイのように骨の硬い魚や大型魚の骨を断ち切るのは刃の厚みがある160mm以上の包丁が適しています。
60mm程度の刃渡りのものでも、使い慣れればアジのような小型魚も捌けます。
50cm以上の魚を捌くことが多い方は、160mm前後の刃渡りの物、小型魚を捌くのが多い方は130mm程度のものが有ればよいと思います。
柳刃包丁
柳刃包丁は家庭で使うなら210mmから270mm程度が使いやすいと思います。
私が現在頻繁に使用しているのは、270mmの物。
長年使用しているので、現在は220mm程度に短くなっていますが…(笑)
300mmというのも所持していますが、長すぎて使い辛いのであまり使用していません。
(台所の奥行きが無いのでf^^;)
300mm以上の長さの物は本職の方向きともいえます
こちらは出刃と同じ作者で堺孝行青二鋼柳刃210
鋭い切れ味が持続し研ぎなおしも比較的容易に出来、とても使いやすい柳刃です。
私は270mmが使いやすいと思っていますが、300mmの物が使いこなせれば300mmの方が刃渡りが長い分きれいに刺身が切れると思います。
この辺りは好みかな?台所の奥行きが広いのでしたら300mmはお勧めです。
手入れ
和包丁(鍛造物)は手入れをしないと直ぐにさびてしまいます。
魚を捌いたら直ぐに汚れを落として乾かし、サラシなどで巻いて保存すると良いでしょう。
6万円以上の高級品になると専用の鞘が付いていますので、乾かしてから入れるようにします。
そして一番肝心なのが切れ味を保つと言うこと。
購入直後は切れ味が良くても、数回魚を捌くと切れ味は落ちてきます。
(捌く量にも寄りますが)
和包丁は簡易シャープナーなどで絶対に研がないでください
刃の角度が変わり切れ味が悪くなるばかりか、刃が欠ける恐れがあります。
和包丁を研ぐときは、昔ながらの砥石を使います。
通常なら砥石は#2000の中仕上砥石と、#3000から#5000の仕上砥石が有ればよいと思います。
刃こぼれをしてしまった場合は、#220クラスの荒砥石で刃を出し、続いて#800、#2000、#4000の順で仕上ていきます。
仕上は私の場合刃の部分のみを12000番で仕上げ、手の甲の産毛が剃れる位まで研いでいます。
その位に研いでおくと、いざ魚を捌くときにスッと刃が入りきれいに捌くことが出来ます。
全体を12000番で仕上げてしまうと、白身魚などは滑りが悪くなるのでかえって切り辛くなったりします。
ここ最近私のところで使っている仕上げ砥石はシャプトンの刃の黒幕シリーズで、切れ味が非常によく刃がつきやすい砥石です。
刃こぼれさえしていなければ、使用後に毎回#12000で仕上げてやるだけで切れ味は持続します。
【仕上げ】
シャプトン 刃の黒幕 #5000
シャプトン 刃の黒幕メロン#8000
【超仕上げ】
シャプトン 刃の黒幕クリーム#12000